収蔵品紹介 COLLECTION

象牙筆筒ぞうげひっとう

作者
作品名
象牙筆筒
寸法
制作年
釈文

古玩文具の魅力⑨

筆筒とは、いわゆる筆立てのことで、円筒状の入れ物に毛筆を逆さまに挿(さ)しておく文房具です。筆筒の歴史は、三国時代の文献にその名がみえるのが最初とされますが、それが筆立てを指すのかどうかは、はっきりしません。また宋(そう)代には、陶磁製の筆筒があったとされますが、これも一般的には使用されていなかったようで、普通は筆をペン皿状の入れ物に横置きにしていました。

筆筒が筆を置く主要な用具となったのは、明(みん)代の中期以降とされ、材質には竹・木・磁器・玉などさまざまなものがありました。そして文人たちは、机上の雅趣を求め、他の文房具同様に材質や装飾に工夫を凝らした筆筒を珍重しました。

今回ご紹介する筆筒は、象牙製のものです。象牙は、古くから希少な素材ですので、本品は特に貴重なものといえましょう。形状は、底部より上部が広い円筒形で、内部は均一にくり貫かれており、底板にも象牙を円形に切り出したものがはめ込まれています。そして表面には、ごく細い線で山水や人物などが彫り込まれています。表面上方には文字が刻まれており、「欲把西湖比西子、淡粧濃抹也相宜」と読めます。これは、北宋(ほくそう)・蘇軾(そしょく)の詩の一節を引用したもので、「西湖(せいこ)を美人の西施(せいし)に例えるなら、薄化粧〔晴天〕も濃い化粧〔雨天〕もすばらしい」といった意味です。この内容から、彫られている絵が中国杭州の名勝・西湖であることがわかります。持ち主はこの筆筒を机上に置き、西湖の湖畔で揮毫(きごう)する自分の姿を空想したことでしょう。所どころに墨跡や染みがあることから、実際に常用されていたものと思われます。